投資本の雑な感想:反脆弱性(上/下)/ナシーム・ニコラス・タレブ

「反脆弱性は投資本じゃないだろ!」という罵声が聞こえるようです。すみません、すみません・・・。この本は、100年に1度と言われた2008年の金融システム崩壊を予見したとも言える「ブラック・スワン」の後継的著作です。

私の拙い理解では、この本は「反脆弱性」という新たな概念を導入することで、想定外の事象(=ブラック・スワン)があふれるこの世界をよりよく理解し、対処できるようにするためのものです。

ざっと読んだ程度でいまいち消化しきれていない感があるので、理解を深める意味も込めて (1)書籍内容のメモ、(2)投資や生活への応用、の2つに分けて書いています。(1)はかなり抽象的な内容で、直接的には投資と関係ないです。

書籍内容のメモ

ブラック・スワン的現象にどう備えるのか

ブラック・スワンに遭遇すると、現代社会ではたいてい過去のデータをもとにさらに予測精度を高めようとする。しかし、過去の最悪を超えてくるのがブラック・スワンなので、予測による対処は効果的でない(それどころか次なるブラック・スワンによる被害を拡大させかねない)。ブラック・スワンには、予測によってではなく、頑健になる、もしくは反脆くなることによって対処するのがより効果的とする。

脆弱性と頑健性と反脆弱性

脆弱、頑健、反脆弱の違いはなかなかわかりづらい。すべてのものは変動によって影響を受けるが、受ける影響に次のような違いがある。

脆弱 :ある要素の変動によって損失を被る
頑健 :ある要素の変動による影響を受けない
反脆弱:ある要素の変動によって利益を得る

脆弱なものの例

衝撃に対するティーカップや人の耐久性、金融システム、大企業、ITシステム、地震や火災に対する映画館の安全性、交通量に対する交通システムの安定性、気温に対する人の健康度合いなど。

半脆弱なものの例

数多くの開業・廃業によって淘汰され続けるレストラン業界、人体、自然など。

脆弱性はどこからくるのか

線形性と非線形性

特定の事象に対する影響が線形なものは脆い。例えば、衝撃に対する人の耐久性で考えてみると、人が衝撃に対して線形に影響を受けるのであれば、数時間歩いただけで数十メートルからの落下と同等の衝撃に達し、破壊されて死んでしまうだろう。

非線形性と脆さ

影響が非線形なものには、凸効果と凹効果(負の凸効果)がある。凹効果を持つものは、変数が大きくなればなるほど損失が非線形に大きくなり、脆い。逆に、凸効果を持つものは、変数が大きくなればなるほど利益が非線形に大きくなり、反脆い。

世の中の多くのものは非線形だが、単純化のために線形として理解したり、線形化するためにルールやシステムを構築する試みが多く見られる。こうした試みを推進する人たちは「フラジリスタ(ものごとを脆弱にする人たち)」と呼ばれ、世の中を脆弱にし、最終的にはブラック・スワンを引き起こして莫大な損害をもたらす。フラジリスタは世の中に溢れかえっており、2008年の金融危機の原因となったフラジリスタとしてアラン・グリーンスパンの名も挙げられている。

反脆弱になるにはどうすればよいか

冗長性を保つ

もっとも原始的な方法は、冗長性を持つこと。これだけで反脆くなることはできないが、脆さから離れ、より頑健になることはできる。自然や生物の多くは、冗長性を持つことで頑健さや反脆さを得ている。

小さな変動を許容する

過度に変動が抑制された世界では、非常に大きな変動が突然発生する(ロシアの計画経済など)。常に発生する小さな変動を許容することで、ブラック・スワン的現象は発生しづらくなる(競争環境にあるレストラン業界など)。

小さいものをたくさん選ぶ

大きいものは脆い。大きいものに依存するのではなく、たくさんの小さなものに依存するようにする。大企業のサラリーマンや公務員より、数百人の顧客に分散されたタクシーの運転手の方が脆くない。

時の試練に耐えたものを選ぶ

時間が立てばいつかはブラック・スワンが発生し、脆いものは崩壊する。古いものを選ぶことで、脆いものを避けることができる。

凸効果を受けられるようにポジショニングする

変動が大きくなればなるほど利益が非線形に大きくなるのが凸効果であり、反脆い状態。この状態では、特定の変数が大きくなれば上限なく利益が増え、小さくなった場合でも損失が限定されているので、変動による負の影響はほとんど無視され、正の大きな効果のみを享受できる。こうしたポジションを取ることができれば、変動が大きいほど利益を得ることができるため、反脆くなれる。

ただしこれは、脆弱性を他者に押し付けることで自分だけ反脆弱になるという行動を生みがち。現代にはこうした「反英雄」とでも呼ぶべき者(上場企業の経営者や学者など)が跋扈しており、倫理的に問題がある。

バーベル戦略をとる

平均的なものを持つよりも、凸効果の高いものをたくさん持つ一方で、凹効果に対して保険をかけるような戦略(両端に重しがあるのでバーベルなんだと思う)をとることで、相対的に反脆くなる。安定した閑職につきながら、趣味や研究をするなど。

投資や生活へどう活かせるのか

ぶっちゃけ、まだあまりきちんと理解できていないので、投資や生活上でどう活かしていけばよいのかはよくわかりません。特に、脆さを避けるべきところとそうでないところの判断が難しい。

投資について

投資の対象

株式、債権、REIT等の証券投資では、レバレッジをかけない限り投資家の損失は出資金額までに限定される。これはオプション性を持った状態と言え、頑健~反脆いポジショニングといえる(経営者から一定の脆さを移転させられる立場でもあるが)。損失の限定されないレバレッジはこの立場を脆くするし、金融システムは本質的に脆いため、基本的にこうした形のレバレッジは避けた方が無難だろう。

ただし、投資先事業で当然のように行われているレバレッジや、レバレッジETFによるレバレッジでは最大損失が出資金額までに限定されており、また利益はレバレッジに応じて高くなるため、バーベル戦略の一種として有効なのかもしれない。

現状の私の投資対象を見てみると、アセットクラスや銘柄はある程度分散してはいるものの、証券システム自体(規制、取引システム、税制等)への依存が非常に強い。できれば、事業や不動産そのもの等、別のシステムへの分散を目指したい。

オプション取引

金融市場ではオプションを駆使することによりたいていの場合に反脆い状態を実現できるが、オプションの存在と価格付けの方法は知れ渡っているため、オプション性を得るためにはそれなりのコストがかかってしまうことが多い。無料のオプション性と違い、恒常的に保持して反脆い立場を維持するには向いていなそう。

ポートフォリオ選択

私のPFはそれなりに少額ずつの銘柄から利益を得ており、この点は良いと思うが、どれも大型銘柄で成長性が低いのはいまいち。小型株をもっとたくさん混ぜつつ、債権や現金の比率でリスクを調整するほうが良いのかもしれない。その場合、配当戦略とは別枠を作ることになるけど、配当メインのPFがかなり保守的なのでちょうどいいのかもしれない。

住宅について

賃貸は何かまずいことがあればすぐに出ていけることから、オプション性があり、反脆いポジショニングと言える。保有はその逆で、効率は良いが脆い。

多くの変数について変動が大きい場合、頑健・反脆い立場を取ることで、直接的な金銭的利益以外にも様々な利益を得ることができる。ブラック・スワンを考慮せずに金銭的な利益だけで持ち家vs賃貸を議論しても片手落ちになる。

住居を取り巻く環境はこれから数十年で大きく変動する見込みで、人口減少、温暖化による気候変動、海面上昇、地震、噴火、テレワークや自動運転等技術の発展による優位な立地の変動、移民の増加、法制度の変更、過大な金利変動、金融システムの変質など、発生が否定できないブラック・スワン的現象が目白押し。これらに目をつぶるのは典型的な七面鳥効果(肉屋に飼われた七面鳥が、殺される前日まで大切に育てられたことを根拠に今が安全だと誤って判断してしまうこと)と言える。

持ち家と賃貸の金額面での比較に決着がつかないことから、賃貸が持つオプション性は、金融市場とは異なりほとんど金銭的コストがかかっていないと思われる。

さらに、手金が少ない状態で持ち家を購入してしまうと、負債によってさらに脆弱性が増してしまう等の問題もある。これらを総合的に考えると、負の影響を許容可能なレベルまで限定できると確信が持てない限りは賃貸の方が無難と思う。

仕事について

現状は収入のほとんどを勤務先企業からの給与に頼っており、脆い状態。証券投資からの収入が増えつつあり、少しずつ解消されてきてはいるものの、まだ不足している。勤務先企業も比較的新しい技術に頼った大企業であり、M&Aによりさらなる膨張を志向していることから、脆い企業である可能性が高い。

それなりの専門性は持っているため、フリーになって収入元を分散させることである種の頑健さを手に入れることはできるはずだが、ぶっちゃけ営業的な活動が面倒くさい・・・。バーベル戦略として、現状の立場を保持しながら副業を探していくのが良さそう。

また、個人的には私の立場はかなり「反英雄」に近づいている感がある・・。これは長い間反対の立場に長くいすぎて摩耗してしまったせいでもあるが、反省しないといけない。

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