不況時にJ-REITの分配金はどうなるのか

最近Twitterで、配当収入の基盤をREITから通信銘柄に移すことにした、という記事が流れてきました。私は現状、配当(分配)全体に占めるREIT分配金の割合がかなり高いことから、不況時の安定性がどの程度か気になってきたので、事務所系・住居系の代表的なREITに関してリーマンショック前後の状況を調べてみることにしました。

事務所系REITの状況

事務所主体の代表的なファンド、日本ビルファンド投資法人(JBF)のリーマンショック前後の状況を確認してみます。JBFはJ-REITの草分け的存在であり、歴史も長く、信用力もあり安定した投資法人です。

分配金の推移

日本ビルファンド投資法人運用報告書より抜粋

公開された分配金推移を見てみると、ピークの1口あたり11,274円から7,569円まで約32%減少しています。分配金減少の原因を確認するため、ピークの14期(08年6月)から底の20期(11年6月)までの空室率、賃料の推移を見てみます。

賃料の推移

賃料は、2008年6月にピークをつけた23,000円近辺から、2011年の12月の17,000円近辺へと約26%下落しています。実は、賃料が底を打つのはまだ2年も先の2013年12月で、16,000円近くまで落ちています。

空室率の推移

東京でみると、2007年12月にピークをつけた2%弱から、2010年6月~の9%程度まで、およそ7%上昇しています。大阪名古屋もおおよそ同程度の上昇幅ですね。当然ですが、賃料よりも動きが半年ほど先行しています。空室率は賃料と違ってこのあたりがピークであり、まずは先に空室率が改善することで収益状況が改善していったことがわかります。

空室率が7%上昇し、賃料が26%も下落したら、分配金が32%落ちるのも無理はないですね。事務所系の双璧と言えるジャパンリアルエステイト投資法人も、JBFほどではありませんが、18%下落しています(13期は受取配当金による特例なので除く)。

ジャパンリアルエステイト投資法人運用報告書より抜粋

事務所系は、不況期に分配金が20~30%程度減ることを覚悟しておいた方がよさそうです。

ポイント
事務所系は不況時に賃料と稼働率が低下しやすく、20%~30%の分配金低下が予想される。

住居系REITの状況

リーマンショック当時から現在まで継続して存在している投資法人は、日本アコモデーションファンド、日本賃貸住宅投資法人(当時はリプラスレジデンシャル投資法人)、スターツプロシード投資法人くらいしかありません。うち、日本アコモデーションファンドは当時4~5物件しか保有していませんし、日本賃貸住宅投資法人はスポンサー破綻や債務償還のための大幅増資等により分配金水準のブレが大きいため、やむなくスターツプロシード投資法人の状況を確認します。

分配金の推移

2006年10月にピークをつけた5,927円から、底となった2010年10月の3,237円まで、なんと45%も減っています。ちなみに、ここ数年の分配金は4,000円を超えたくらいで安定してきており、直近(2018年4月期)の分配金は4,645円まで回復しています(それでもピーク付近に比べるとまだ少ない)。

賃料の推移

賃料水準で見ると、ピークの89,338円から緩やかに下落を続けており、2012年4月には85,399円と4%程度下落しています。

空室率の推移

ピークの稼働率は97.9%、底となったのは95.8%で、空室率としては2.1%の増加。誤差のレベルと言えます。

このように、稼働率や賃料は事務所に比べて圧倒的に安定していますが、分配金はJBFより大幅に減っています。実際にPLを見てみると、営業費用、営業外費用がともにどんどん増えているのがわかりました。賃料や稼働率を保つために、バリューアップ工事や広告料、フリーレント等でかなりお金を使っていたのかもしれません。営業外費用では融資関連費用やその他費用等が増えており、詳細は不明ですが資金調達に苦労していたのかもしれません※。

※ 当時の資料を色々眺めていると、やはり中小投資法人はリファイナンスに苦労しており、融資関連費用や金利支払いによって営業外費用が嵩んでいたようです(「ARES J-REIT REPORT」No.2(2010年1月) – J-REIT.jp)。

これらは、住居系がどうこうというより、投資法人自体の財務の弱さや運営の巧拙が反映されている可能性が高いです。実際、日本アコモデーションファンド投資法人の分配金はほとんどリーマンショックの影響を受けていません。

日本アコモデーションファンド投資法人運用報告書より抜粋

こうして見てみると、住居系は不況期でも比較的安定しているように見えますが、投資法人によっては賃貸運営やファイナンスの巧拙によって大きく分配金水準が左右されてしまう、と考えられます(日賃貸の場合は増資による希薄化、スターツプロシードの場合は費用の増加による純利益の低下)。

ポイント
住居系は不況時でも賃料や稼働率が下がりづらく、分配金も低下しづらい。
ただし、事務所・住居に限らず、不況時には賃貸運営やファイナンスの巧拙によって大きく分配金水準が左右されそう。

ホテル&物流系REITの状況

当時から現在まで存続し続けている投資法人がないため、調査できていません。

まとめ

  • 事務所系は賃料、空室率ともに不況の影響を受けやすく、分配金も低下しやすい
  • 住居系は賃料、空室率に対する影響は少ない
  • 不況時は投資法人の運営やファイナンスの巧拙の差が顕著に現れやすく、それによって大きく分配金が減少することがある

過去の実績だけから判断すると、配当金生活の基盤としてはやや心もとない結果となりました。住居系REITがリーマン・ショックの経験を生かして財務面・運用面で対策を進めていれば、住居系の比率を増やすことで不況期でも安定した収入が得られるはずですが、運用報告書から読み取るのは私の力ではなかなか難しいです。スターツプロシードは徐々に持ち分を減らした方が良いかな・・・?

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