投資本の雑な感想:ダンドー/モニッシュ・パブライ

Twitterでアジデン氏が何度も勧めていた本で、著者のモニッシュ・パブライは、バフェットの信奉者として知られたバリュー投資家です。この本、名前を聞いたことはありましたが、実際に読んだことはありませんでした。図書館で調べてみたところ、誰も借りていなかった(悲しい…けど、置いてあるのも不思議)ので、取り寄せて読んでみました。

ダンドーとは

「ダンドー」というインドの言葉は、英語では「ビジネス」と訳されますが、実は単なる「ビジネス」ではなく、彼らがビジネスに対して持っている独特の態度を含んでいます。それは、リスクを最小にしながらリターンを最大にすること。合言葉は「コインの表なら勝ち!裏でも負けは小さい!」

ダンドー投資はバリュー投資の一種

本書の投資スタイルは王道的なバリュー投資で、企業の本質価値を将来取り出し可能なキャッシュの割引現在価値として算出し、取引価値と比較して十分割安であれば(安全域が確保されていれば)投資する、というわりと聞き慣れたものです。

私はグレアムの「証券分析」も未読ですし、こうしたバリュー投資の王道的手法については概要を聞きかじった程度で、具体的な手法はあまりよくわかっていませんでした(どうせ将来キャッシュフローなんかわからんし…みたいな)。

本書では、自身のファンドでの投資経験からいくつかの企業を取り上げ、具体的に企業価値を算定して投資判断する例を示しており、現実での割り切り方を知ることができて非常に参考になりました。

投資有無や投資金額の判断では、今後考えられるシナリオを描き出し、それぞれの損益と実現可能性を導出しているのも興味深いです。バリュー投資家はみんなこんな感じでやってるんですかね?投資金額の決定には、ケリー基準を用いていました。

ダンドーフレームワーク

基本的には先程述べたようなバリュー投資スタイルですが、ダンドーではさらに細かな行動原則として次の9項目が提示され、ダンドーフレームワークと呼ばれています。

  1. 新規ではなく、既存のビジネスに投資する
  2. シンプルなビジネスに投資する
  3. 行き詰まった業界の行き詰まったビジネスに投資する
  4. 永続的な塀を周囲に備えたビジネスに投資する
  5. 厳選した少数に賭ける、大きく賭ける、たまに賭ける
  6. 裁定取引に固執する
  7. 常に安全域を確保する
  8. 低リスクで不確実性の高いビジネスに投資する
  9. 革新的なビジネスよりも成功者をマネたビジネスに投資する

これらはすべて、「コインの表なら勝ち!裏でも負けは小さい!」につながるものです。多少レベル感の違ったものが混じっているように思うので、これらの原則を理解しやすいようにさらに3つに分けて考えてみます。

バリュー投資の基本原則

2. シンプルなビジネスに投資する
4. 永続的な塀を周囲に備えたビジネスに投資する
5. 厳選した少数に賭ける、大きく賭ける、たまに賭ける
7. 常に安全域を確保する

これら4つはバリュー投資の原則を引き継いだものであり、おなじみの話と言っていいと思います。

シンプルなビジネスに絞ることで、企業の本質価値をブレなく正確に算出しやすくする。永続的な塀によって、長期にわたるリターンを保証する。投資価値のあり、信頼できる数少ない企業を見つけたときだけ、大きく賭ける。安全域によって損失の可能性を劇的に減らし、リターンを高める。どれもバフェットが繰り返し述べていることです。

枯れた投げ売りビジネスを狙う

1. 新規ではなく、既存のビジネスに投資する
3. 行き詰まった業界の行き詰まったビジネスに投資する
9. 革新的なビジネスよりも成功者をマネたビジネスに投資する

これらも多くのバリュー投資家が実践してきたことではありますが、パブライは特に既存ビジネス・安定したビジネス・二番煎じのビジネスにより大きな価値を見出しているようです。

これは、自身が新規ビジネスで失敗した経験や、インドの先達たちが行ってきたモーテルや鉄鋼ビジネスからの影響を感じさせます。GoogleとMicrosoftどちらに投資するかといえば、迷いなくMicrosoftと話すほど、パブライの姿勢は筋金入りです(Microsoftは革新は不得意ですが、あらゆる既存ビジネスをマネて打倒する能力を高く評価しているようです)。

不確実性を味方につける

8. 低リスクで不確実性の高いビジネスに投資する

私は個人的に、これがダンドーを凝集した核心的な原則だと感じています。低リスクで不確実性の高いビジネスに投資するということは、要するに「コインの表なら勝ち!裏でも負けは小さい!」を実践しろということで、ダンドーの合言葉そのものです。そして、この「コインの表なら勝ち!裏でも負けは小さい!」の状態は、タレブが導入した反脆弱性(が依拠するオプション性)そのものでもあります。

期せずして立ち現れる反脆弱性

反脆弱性はブラック・スワンのタレブが導入した概念で、ランダム性や変動から利益を受ける性質を持つものです。この性質を得るにはいくつかの方法がありますが、ダンドーフレームワークは反脆弱性に対応するための方法に驚くほど近いです。

  • 冗長性を保つ
    • → 7. 常に安全域を確保する
  • 時の試練に耐えたものを選ぶ
    • → 1. 新規ではなく、既存のビジネスに投資する
    • → 9. 革新的なビジネスよりも成功者をマネたビジネスに投資する
  • 凸効果を受けられるようにポジショニングする
    • → 8. 低リスクで不確実性の高いビジネスに投資する

反脆弱性に関しては、以下の記事(特に「反脆弱になるにはどうすればよいか」)を参照ください。

投資本の雑な感想:反脆弱性(上/下)/ナシーム・ニコラス・タレブ

凸効果を受けられるようなポジショニング

凸効果とは、特定の要素が減少した場合の損失は限定されており、増加した場合の利得は青天井となるようなものです。以下のようなグラフで表すことができます。

こうしたポジションを取ることができれば、変数Xの変動が大きければ大きいほど、すなわち不確実性が高ければ高いほど大きな利益を得ることができるというわけです。

ウォール街はリスクと不確実性を混同する

パブライは、ウォール街はリスクと不確実性を混同する、そこにチャンスがある、といいます。ウォール街の金融理論では、リスクを価格の標準偏差で判断しますが、この場合、価格が上振れする場合でもリスクが大きいということになります。

他方でパブライは、不確実性とリスクを別のものとして扱い、リスクはあくまで損失を被る確率として捉えます(世間ではこっちが主流です)。ウォール街は不確実性とリスクを混同し、単に不確実性が高いものをリスクが高いとして割安に放置しがちなため、そこに大きなチャンスが発生する、というわけです。

また、リスクは(本書で述べられているように)様々な方法で小さくできますが、不確実性をコントロールすることはできません。ウォール街は不確実性とリスクを混同した結果、不確実性をもコントロールしようとしますが、それがブラック・スワンを呼ぶことをタレブもパブライも知っています。だからこそ、不確実性から利益を得る方法が重要なわけです。

まとめ

実際にファンドで使われているというバリュー投資の実例を見ることができるだけでなく、反脆弱性を応用した事業や投資が紹介されており、非常に面白く読むことができました。200ページ程度の薄い本で、表紙もなんだか怪しい雰囲気ですが、バリュー投資の入門書としておすすめできる本です。

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