投資本の雑な感想:新賢明なる投資家 上/下

同じ著者によるプロ向けの書籍「証券分析」を読んだあと、企業価値の分析手順をもう少し平易に書いた本がないかと思い、以前一度読んだこの本を再度手にとってみました。

第1章 投資と投機―賢明な投資家が手に入れるもの
第2章 投資家とインフレーション
第3章 株式市場の歴史―一九七二年初めの株価
第4章 一般的なポートフォリオ戦略―保守的投資家
第5章 防衛的投資家のための株式選択
第6章 積極的投資家の分散投資―消極的な方針
第7章 積極的投資家の投資―積極的な方針
第8章 投資家と株式市場の変動
第9章 投資ファンドへの投資
第10章 投資家とそのアドバイザー
======== 下巻 ========
第11章 一般投資家のための証券分析
第12章 一株当たり利益に関して
第13章 上場四企業の比較
第14章 防衛的投資家の株式選択
第15章 積極的投資家の株式銘柄選択
第16章 転換証券とワラント
第17章 特別な四社の例
第18章 八組の企業比較
第19章 株主と経営陣――配当方針
第20章 投資の中心的概念「安全域」

この本は、グレアムによって1973年に出版されたバリュー投資の聖典とも言える「賢明なる投資家」の第四版をもとにしていますが、ツバイクが2002年時点の視点から注釈を加えた二重構成になっており、少し特殊な構成の本といえます。

幅広く投資の心得を説く上巻は初心者向け

刊行時期の都合上ある程度は仕方のないことですが、グレアムは1972年直前に起こっていた株式の高騰に、ツバイクはITバブルに対して多くの注意が割かれており、それらの現象をどのように理解するかについての考察にやや紙幅が割かれてすぎている嫌いはあります。

また、現在では制度や社会状況が変わってしまい、すでに役に立たないような記述もちらほらと見受けられます。とはいえ、上巻は具体的な手法というより、投資家の持つべき姿勢やすべきでないこと等、より普遍的な内容が多いため、今も通用する内容がほとんどです。多くの投資入門書があふれる現在からすれば非常に基本的な内容ともいえますが、これは金字塔がその後広まって常識となった結果、古びて見える現象(AKIRAなどと同じ)でしょう。

私の場合、無意識に取りがちな行動や好みがちな投資行動のパターンが、実は本書で語られている心構え(特に、第5章、第6章)そのものであったと再発見する機会が多く、投資を続ける上でも自信になりました。 要するに、昔一度読んだときに記憶の深くに残っており、無意識に影響されていたということですね。

防衛的投資家の株式選択条件

グレアムの提唱する、防衛的投資家の株式選択条件は次のようなものです。

  • 一定以上の規模
  • 財務状態が十分に良い
    • 製造業:流動資産が流動負債の倍以上=流動比率200%以上
    • 製造業:長期負債が純流動資産(流動資産ー流動負債)を超えない
    • 公益企業:負債が株式資本(簿価)の2倍を超えない
  • 最低過去20年間、継続的に配当がある
  • 過去10年間、赤字決算がない
  • 一株あたり利益が、10年間で最低3分の1以上伸びている
    • それぞれ3年間の平均で比較
  • 株価が純資産価値の1.5倍以下
  • 株価が過去3年の平均収益の15倍以下
  • PER×PBRが22.5以下

下巻はバリュー投資の入門書

下巻では、具体的な企業を複数取り上げ、相互に比較しながら投資対象として適しているか議論していく場面が増えていきます。特に14章~18章の例は、理屈はわかっていても具体的にはどうやって個別銘柄を評価して良いかわからないような人にとっては大きな助けになると思います。

「証券分析」が若干辛かった(債券分析の紙幅がやたら多い&単純に分厚い)私にとっては、下巻はグレアムのバリュー投資的アプローチを確認するためのちょうど良い入門書になってくれました。

そして最後は、あまりにも有名な安全域に関する言及、そしてバフェットによるグレアム・ドッド村の控えめな讃歌で幕を閉じます。

30年を隔てた別人同士が交互に意見を述べていくという構成上、やや冗長なのは間違いありませんが、投資の神々の一柱とも言えるグレアムの言葉にはやはり絶大な重みがあります。バリュー投資への再入門だけでなく、自身の投資家としての姿勢を再点検するのにも最適な一冊として、今でもおすすめできる本だと思います。

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