投資本の雑な感想:ティリングハストの株式投資の原則

フィデリティのファンドマネージャであるティリングハストによる、王道的バリュー投資本です。投資スタイルはかなりバフェット寄りでしょうか…?目次はこんな感じです。

第1部 臨機応変
第1章 マッドワールド
第2章 愚かな人間の錯覚(決定バイアス)
第3章 ギャンブラーと投機家と投資家
第4章 お金を乗り越えろ

第2部 死角
第5章 知る必要があるのか
第6章 私にはシンプルな人生
第7章 シンク・スモール(小さな範囲で考える)
第8章 はた迷惑な乱暴者

第3部 正直で有能な受託者
第9章 勇気を持て、突出したキャラクター
第10章 お金を払う価値がある
第11章 悪い奴らは黒い帽子をかぶるのか
第12章 送りつけられたレンガと会計の謎

第4部 長生きして豊かになろう
第13章 終焉は近いのか
第14章 噴出油井と油膜
第15章 ハイテク株とSF
第16章 どれだけの債務が過大なのか

第5部 どのような価値があるのか
第17章 将来上がる割安株を探せ
第18章 どの利益?
第19章 価値を判断する術
第20章 二つのバブルのトラブル
第21章 二つのパラダイム

現代バリュー投資のガイドライン

この本は、ある種これまでのバリュー投資本の集大成のような本です。私にとって非常に参考になったのは、これまでのバリュー投資本で繰り返し取り上げられてきたお馴染みのトピックをすべて踏まえた上で、一級のバリュー投資家であるティリングハストが2018年の地点からその考えを述べていることでした。

バフェットやグレアムの書籍は原典と言うべきものですが、古い時代にかかれた記述も多く、読み進めていると「現代でも同じ考えが通用するのだろうか?」と疑問に思うことも多いです(そこに思いを巡らせるのもまた楽しいものですが)。この本ではそういった疑問に対し、ティリングハストが様々な考えを披露してくれており、思考のガイドとして非常に役に立ってくれます。

5つの原則と5つのパート

この本では、ティリングハストが掲げる5つの原則を中心に豊富な事例と彼の考えを交える形で記載されています。5つの原則を次に示します。

  1. 合理的な判断をする
  2. 理解しているものに投資する
  3. 正直で信頼に足る経営者と仕事をする ※
  4. 陳腐化しやすく、また財政的困難に陥りやすい事業を避ける
  5. 株式を適切に評価する

※ 書籍では「正直で信頼に足るファンドマネジャーと仕事をする」となっていますが、原書では manager となっており、第3部の内容と照らし合わせると「経営者」と訳すべきではないかと考えたためこのように記載しています

本書は各原則に対応した全5部から成りますが、最初に読んだ時にはこのことに気がついていませんでした。。だって、原則名とパート名全然違うし(冒頭の目次見てみてください)、書籍内にもそれらしいこと一切書いてないんだもん…。

また、1〜2部あたりまでは若干訳が固いので注意が必要です。原書の文体もやや特徴的で、若干訳しづらいのだと思われますが、それにしてもかなり直訳気味なんですよね。

1:合理的な判断

ここでは主に、行動経済学的な側面を中心に投資家が取るべき・避けるべき行動や、持つべき態度について述べています。投資家は人間の逃れられない選好を意識し、次のような態度を持つべきと述べられています。

  • 感情的な認識と理性的な判断をあわせもつ
  • 好奇心と懐疑主義をあわせもつ
  • 考えを他者から独立させる
  • 為すべきでないことを避け、辛抱強く待つ
  • 同意しないことに合意する
  • 誤りを受け入れ、失敗に対処する
  • 曖昧さを受け入れ、楽しむ

非クオンツがしばしば強調して語る心理的な側面を、合理的な判断を下すという原則の一部として捉えているということですね。私には非常に共感できる章ではありましたが、事例等はなく、やや教科書的なパートでもありました。

2:シンク・スモール

理解しているものだけに投資する、これは投資の基本でもありますが、バリュー投資のストックピッカーにとって特に重要です。ティリングハストの立場はおおむねバフェットと似ており、効率的市場仮説の綻びを信じ、難しい産業を避けることに注力します。この原則を無視した結果、ティリングハストや同僚たちが招いた災厄の事例とともに、この原則の重要性が語られていきます。

ティリングハスト自身は、法の支配や民主主義が浸透していない地域は避けているようで、市場の効率性が及びづらい領域として小さな個別企業を主なターゲットとしているようです。

3:正直で有能な受託者

ここでは主に、有能な経営者とはどういったもので、逆に株主をあざむく経営者とはどういったものなのか、それぞれ章を割いて語られています。ここもバフェットやグレアムの主張の現代版といった雰囲気ですね。軽く事業戦略にも触れていますが、その後は主に配当、自社株買い、企業買収といった資本配分と、不正な会計について書かれています。

4:長生きする事業

ある程度投資本を読んできた人からすると、ここからが本番かもしれません。ここと次のパートで、ティリングハストが事業価値を推定する方法が語られます。ティリングハストは、価値が以下の4つの要素から成るとしています。

  1. 収益性または収入
  2. ライフスパン
  3. 成長
  4. 確実性

このパートでは、さまざまな企業をこれら4つの観点で確認しながら、どういった特徴が価値に貢献しやすいかをぼんやりと浮かび上がらせています。ここは投資家の注力領域と自ずとかぶってくる部分であるため、やはりバフェットとかなり似ています。具体的には、コモディティそのものやコモディティ化した事業、景気に強い影響を受ける事業は避け、生活必需品や規制産業、ブランドによる堀を好んでいるようです。

5:事業の価値

具体的に事業の価値を計る方法を記載したパートです。ティリングハストは基本的に、リターン推測のためにまずは利回り(≒PER)を用い、精度を高めるために次のような確認をしていく、というアプローチのようです。

  1. 公表された利益が実現利益に結びつかない銘柄を除外する
  2. 利益を計測するにあたり、一定の範囲の平均を用いて調整する
  3. バリュエーションを正当化できるような成長が望めるか(堀があるか)確認する
  4. 同じような平均利回りの(信頼できる)銘柄をグループ化した上で、許容できないリスクを持つ銘柄を除外する

具体的な銘柄をいくつか挙げて実際に評価しているので、かなり参考になると思います。この際、利益としては基本的にはGAAPの利益、株主利益、フリーキャッシュフローを使っているようです。ただし、以下の場面ではGAAPでは財政を正しく捉えることができないので注意すること。

  1. インフレが高進している
  2. 知的財産が関係している
  3. 買収を繰り返している

冒頭でも述べましたが、本書の前半部分は、主要な投資トピックを現代的視点から振り返ることで現代のバリュー投資の思考の足場を改めて固めることができる点に非常に魅力を感じました。

また、後半はティリングハストが銘柄を評価する上で、数値上はかなりざっくりと割り切った方法を使っていることが垣間見え、一級のファンドマネージャでもスクリーニングの基準はこれくらいなんだな、と参考になりました。その分やはり事業特性や業界、環境の理解に時間を割いていますが、その点はやはり難しく、自分の得意な事業や環境を少しずつでも広げていかないとうまく機能しないだろう、とも感じました。

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