投資本の雑な感想:ワールドエンドエコノミカ

月面都市を舞台に、夢を叶えるために家を出た16歳の少年が、トレードと投資で出会いと挫折、成長を繰り返していく経済ラノベ。原作はインディーのビジュアルノベルらしいですね。1冊=1部ごとに経済の1テーマを扱っており、3冊合計で2500ページ近くの大作です。

物語の舞台は2010年代。軌道エレベーターが建設されて月面都市に人が住んでいる世界ですが、月面都市が存在すること以外、世界は概ねリアルワールドと同じであり、小説世界の経済状況や主題となる経済イベントも、概ねリアルワールドが下敷きになっています。

投資・経済本として

1巻は個人のオンライン短期トレードを、2巻は21世紀初頭に発生した巨大な会計不正を、3巻は100年に1度と言われた世界金融危機をテーマに、主人公とその仲間たちが、まるで歴史の登場人物として入り込んだかのように描かれていきます。

1巻:短期トレード

私個人は短期トレードをしないので、1巻の内容がどの程度現実に即したものなのかはよくわかりませんでした。ただ、こんな風にトレードしている人もいるのかな、と考えながら他人事のように眺めるのはなかなか興味深いものでした。

2巻:会計不正

この巻でのテーマとなる経済イベントは巨大な会計不正についてです。ただし、いくつか会計不正に関するおおざっぱな説明が出てきはするものの、細かい話はほとんどなく、大企業の不正を暴く一般小説に限りなく近い読後感でした。経済本としてはやや物足りませんが、非常に読みやすい内容と思います。

3巻:金融デリバティブ/CDS

3巻はこれまでとは打って変わり、世界金融危機の要因となった具体的なデリバティブや金融機関とその業務、金融制度、法律の知識等がこれでもかと登場します。物語の根幹を成す金融商品がかなり複雑で、登場する組織も多岐に渡るため、ある程度細かい説明をせざるを得なかったのかもしれません。

さらに、金融危機が経済に及ぼす影響やそれに対する経済政策に関する説明も登場するため、投資について相当程度詳しくだけでなく、昨今の金融政策についてもある程度明るくなければ何のことやらわからないのでは?と心配になるほどでした。

しかしその分、ある程度の知識がある人にとっては読み応えは十分で、知らないこともいくつかあり、経済本として非常に興味深く読むことができました。

物語としてどうなのか

ここからはある程度のネタバレがありますので、未読かつ今後読む予定がある人は先に進まないことをおすすめします。

さて、本書の物語的側面ですが、1部の衝撃的な結末、2部での再生と飛躍、3部中盤までの経済的ダイナミズムとの対峙は非常に面白く、また敵役を含む登場人物も皆魅力的でかなり楽しめました。若干ラノベ的なハーレム要素は感じられますが、主人公は一貫してヒロインに忠実であり、各部で懇意になるサブヒロイン的な女性たちとはきちんと一線を引いており、またそうした女性たちも主人公に依存することなく自立し、成長していくのは非常に好感が持てました。

バートンはあれでよかったのか?

不満があるとすると、3部終盤の展開ですね…。特に、これまであれほど強固な信念をふりかざしてきた敵役のバートンが、あんな説得であっさりと寝返るのは非常に不自然に感じました。バートンの背景を色々と想像して補完すれば納得できなくはないですが、バートンに関する情報があまりにも少なすぎ、少し残念に感じるところです。

ハガナにはいまいち魅力を感じない…

ヒロインであるハガナにあまり人間的な魅力がないのも残念なところ。サブヒロインたちが独立した自我と望みを持ち、人間として魅力的に映る一方で、ハガナは序盤の登場から一貫して自我が薄いまま主人公に依存し続けており、ペットのようで可愛くはあるものの、人間として魅力的とは感じませんでした。終盤の登場で大きな成長が見られるか、と期待していましたが、まったく変わっていなかったので失望してしまいました。

ワールドエンドエコノミカのタイトル回収もちょっと…うーん。それならエンドオブザワールドじゃない?とか…

投資と経済のエンターテインメントの楽しさ

とはいえ、全体的には非常に楽しいエンターテインメントに仕上がっており、経済・投資好きとしては是非またこうしたスタイルの作品を読んだりプレイしたりしてみたいと思いました。新たな展開があるとの告知を見た気がするので、リメイク等ではなく新作なら嬉しいなと思います。

個人的に好きな登場人物は、悲観の帝王ウォレスと、小動物のようだった序盤から一点、マッドサイエンティストのようになってしまったクリスですね。正直、バートンと手を組ませるのはクリスにして、ハガナをもっと掘り下げた方が良かったのでは?とも思ってしまいました。

なにはともあれ、次回作を楽しみにしています!

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