投資本の雑な感想:バフェット 伝説の投資教室

原題はWarren Buffett’s Ground Rules – Words of Wisdom from the Partnership Letters of the World’s Greatest Investor。直訳だとバフェットの基本原則 世界最高の投資家が投資パートナーへのレターに記した金言、みたいな感じでしょうか。

目次は以下です。

第1部 
第1章 バフェットの投資教室 開講にあたって
第2章 複利運用について考える
第3章 インデックス投資――「何もしない」投資戦略
第4章 運用実績の評価――市場インデックスと比べてみる
第5章 「パートナーシップ」である理由――そのエレガントな構造を解き明かす
第2部
第6章 ジェネラル――銘柄選定3つのタイプ①
第7章 ワークアウト――銘柄選定3つのタイプ②
第8章 コントロール――銘柄選定3つのタイプ③
第9章 デンプスターに飛びこむ――資産転換で企業価値を向上
第3部
第10章 「安全志向」対「慣例主義」
第11章 税金
第12章 「規模」対「運用実績」
第13章 高度成長期の対極的な運用戦略――「ゴーゴー」対「ノーゴー」
第14章 有終の美を飾るための知恵

バフェット関連で最初に読むべき本がこれ

世界最高の投資家と言われるバフェット。投資の勉強でここを外すことは難しく、バフェット関連はこれまで以下のものを読んできました。

堀を重視するいわゆるバフェット銘柄を見分ける際の財務諸表の着目点
バフェットの投資案件を時系列に追ったもの。

上記の順で読んだ後にこの本へたどり着いたのですが、この順は壊滅的に間違っていることがわかりました。これでは、バフェットからの手紙で常識として語られる投資アイディア・手法・事例はいまいち良くわからず、財務諸表を読む力で着眼点がグレアムとかなり違うことに戸惑い、重要投資案件20でようやくバフェットの投資がいわゆる優良企業だけでなく様々な手法を併用していることを知り、最後にやっとグレアムから離れた理由を肌で理解する…といった有様。

効率的に理解するなら、次の順序で読むのがおすすめです。当たり前ですが、時系列に追っていった方が格段に理解しやすいですから。

1バフェット 伝説の投資教室グレアムを土台とした初期バフェットの投資手法・パターンと、その限界について理解する
2バフェットの重要投資案件20バフェットの投資手法が生涯を通じてどのように変遷したのか理解する
3史上最強の投資家バフェットの財務諸表を読む力バフェット中期〜後期の投資手法において、財務諸表に現れる特徴を理解する
4バフェットからの手紙バフェットの一貫した投資哲学を事例を振り返りながら理解する

メインディッシュは第2部

この本のメインディッシュはなんといっても、初期バフェットが史上最高のパフォーマンスを叩き出した投資手法を詳述した第2部でしょう。これは後ほど自分用のメモも兼ねて詳しく述べます。

その他の部分はバフェットからの手紙等で今後も繰り返し語られることになりますが、個人的に興味深かったのは12章の「規模対運用成績」、そして13章の「高度成長期の大局的な運用戦略」です。前者は個人投資家の超過利潤の源泉、13章は今のような歴史的に高水準な相場での生き残り方のヒントとなると思います。

バフェット投資の類型

初期のバフェットの投資には、いくつかのバリエーションがあります。バフェットはこれらを組み合わせることで、バリュートラップや市況の変化による影響を軽減し、結果として10年以上にわたり安定した高パフォーマンスを叩き出しました。

ジェネラル

安値で売られた銘柄を買い、上がるまで待って売る、という手法です。本来は個人オーナー向けのジェネラルのみを指していたようですが、後ほど「相対的に過小評価されたジェネラル」が加わったことで、精密な定義が多少難しくなりました。

個人オーナー向けのジェネラル

個人オーナー向けのジェネラルはグレアムに最も忠実なもので、内在価値以下で売られている銘柄を取得して評価が是正されれば売る、というものです。その多くは事業に魅力がなく長期的な保有には向かないため、一度だけ無料で煙が吸える「シケモク」と呼ばれたりもします。

内在価値は精算を見据えて簿価ベースで計算することが多く、典型的なものはネットネットと言われます。この名称は、ネット資産(正味流動資産 − 負債)からネット利益が得られることから来ています。ただ、継続が前提となる企業の場合は利益ベースで計算したり、これらを組み合わせて評価することもあるようです。後述する「コントロール」のような状況では、資本を再構成した後に事業は利益ベースで評価している場面も見られます。

弱点と対策

この手法の弱点は、カタリストと呼ばれる株価是正がいつ起こるのか予測できないこと、その多くが流動性に乏しい小型銘柄のため、運用資産が大きくなるにつれて手間に見合った成果を得づらくなることです。

バリュートラップの対策としては、1つのジェネラル銘柄にあまり多くの資金を注がず、多数の銘柄を持つことです。バフェットの場合、5〜10%の主力銘柄を5〜6銘柄保有し、さらに10〜15銘柄でより小さいポジションを持っていたようです。また、資金力と経営力を備えているなら、後述する「コントロール」手法に移行することで弱点を補うことができます。

一点気になったのは、清算価値を下回った銘柄であるにも関わらず、市況全体が下落した場合は他の銘柄と同様に下落するため注意が必要、と繰り返し述べている点です。個人的には、モメンタムなんかに比べるとマシだとは思っているんですが…。

相対的に過小評価されたジェネラル

相対的に過小評価されたジェネラルは、簿価のような絶対的な価値基準を用いた割安ではなく、似た特徴を持った他の銘柄と比較して割安な銘柄を買い、価格の是正を狙うものです。

BPL中期以降、個人オーナー向けジェネラルが数を減らす中、大きな利益を上げられるもう1つの手法として記載されています。ただ、レターでも書籍でも説明はかなり少なく、例としても同じ業界の似た会社でPERが大きく違うようなケースが述べられているのみです。

実例としては、最近のパクリ銘柄の中でこのアイディアに基づいている(と私が勝手に考えている)ものがあります。「いすゞ&IJTT」、「日経平均&JR東日本」です。IJTTはいすゞの子会社であり、事業的なつながりが深く業績もほぼ連動します。そのため、中期的にはこれらの株価もおおよそ連動すると思われ、実際そのとおりになりました。

JR東日本は日経平均との連動性が高いですが、ここ1年は乖離が広がっています。こちらはまだ是正の気配はないですが…。IJTTの方はもともとジェネラルとしての性質も持っていたので、いすゞの株価上昇がカタリストとなった、という見方もできるのかもしれません。

バフェット自身この手法を「雲をつかむようなもの」と述べており、簿価に基づく割安評価に比べると不確実性が高いのでしょうが、その分応用範囲はかなり広い印象を受けました。小塚先生の上昇下落局面でのアービトラージもここから来ているのでしょうか。バフェットがここまで細かい裁定をしていた記憶はないのですが、気になるところです。

コントロール

コントロールは、株式の多くを取得して経営判断に影響を与えられる立場になることで、資本の再配分、事業のスピンオフ、企業の精算等により、カタリストを含む投資の出口を強制的に実現する手法です。

ジェネラルの延長線上に位置づけられ、安値放置された企業を買い進める間にもカタリストが発生せず、結果として保有比率が経営に影響を与えられる水準に達した場合、この手法へ移行することがあります。ジェネラルで利益を実現するための保険のようなもの、と見ることもできます。

バフェットはこの手法で大きな利益を得ていますし、今やバフェットの代名詞とも言えるバークシャーもコントロールの結果紆余曲折を経て手に入れた企業ですし、こうした企業の経営を改善する過程で様々な経験や人脈を得ることができたようです。しかし、自身の負荷が非常に高く、世間の風当たりも強かったため、BPL末期では徐々に避けるようになっていったようです。

個人投資家には極めてハードルが高い

個人投資家にとっても、資金力や就業形態の問題からこの手法を取ることは非常に困難と思います。また、取締役会はたいていあまり協力的でないため、この手法を完遂するには在る種の高い経営能力が必要とされます。そういう意味でもハードルは非常に高く、現実的ではないでしょう。

ワークアウト

合併アービトラージとも呼ばれる手法で、TOBのような期間とオッズが決まった投資案件に対し、綿密な調査に基づいて裁定を取る手法です。こちらも各国の法制度に関する理解が必須であり、企業の綿密な調査、継続的な状況の監視が必要なことから、なかなかハードルが高いものと思います。私は出来る気がしません。。

凡人を自覚する個人投資家の出発点

まず真似るべきは初期のバフェット≒グレアム

バフェットの投資は難しすぎると良く言われますが、そこで語られるのはたいてい中期以降の優良銘柄投資、その堀の目利きです。しかし、こうして一通り全体像を理解してみると、ほとんどの個人投資家は必ずしも優良銘柄投資を真似て塀を評価する必要はなく、むしろ初期の投資…つまりグレアムに忠実な手法を真似ることに優位性があると感じるのではないでしょうか。

バフェットがグレアムの手法を離れたのは、1960年代後半のバリューの死とも言うべき市況の加熱があったこと、そして資産規模が大きくなりすぎたことで、過小評価された銘柄がほとんど見つからず、少量見つかったとしてもその多くは小型株のため、資産全体の運用成績に大きな影響を与えられなくなったからです。

もしこうした状況にならなければ、バフェットはいまでもグレアムの手法を続けていたかもしれません。実際、バフェットの運用成績が最も良かったのは1950年代、グレアムの手法をベースにした時代です。

我々のような資金量の少ない個人投資家の現在地では、まったく状況が異なります。小型株でも十分な比率で保有することができますし、現在の株式市況はまったく投資対象が見つからないような水準ではありません。我らが日本市場は輪をかけて歪みが放置される傾向にあります。…その分バリュートラップの可能性も随分高くなりますが。

それでもやはり人を選ぶ

ただ、コントロールは個人の資金量や就業形態では難しいですし、ワークアウトもかなり人を選ぶため、実質的にはジェネラルのみで戦っていくことになります。その場合、かなりの時間を企業評価に費やし、それなりの頻度で売買を繰り返すことになるでしょう。株式投資にそこまで時間をかけ、その分の見返りを得るには、少なくとも数千万円以上の運用資産とメンタル的な適性が必要なのでしょうね。。

優良企業を見つけられれば…

こうした投資が難しく感じた場合、「理想的な保有期間は永遠」と言われる中期以降のいわゆるバフェット銘柄が魅力的に思えてきます。しかし、こうした優良企業を見極め、妥当な価格で買うのはグレアムの投資とはかなり違ったスキル・マインドセットが必要となってきます。いつか、出来るようになるといいな…

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