10年ぶりに自ら映画館へ足を運ばせたシン・ゴジラ、評判に偽りなし(たぶんネタバレなし)

見る予定は、まったく、これっぽっちもなかった。ゴジラシリーズは怪獣同士のアクションで楽しませる、言っちゃ悪いが子供騙しの作品としか思っていなかったし、実際のところ過去のゴジラシリーズで目にしたのは、小学校で無理やり見せられたゴジラvsビオランテだけだ。シン・ゴジラも予告動画を流し見はしたものの、露ほども興味を惹かれず、まして見に行くなんてことは夢にも思わなかった。封切りされた土日を過ぎ、少しずつ評判が届きはじめるまでは。

最初の土日が過ぎ、あちこちからぽつぽつと上がってきた声は、予想を裏切るものだった。「日本映画史に間違いなく残る」といったストレートな大絶賛の声に加え、何やら戸惑いながらも「すごいものを見てしまった」「庵野にしてやられた」といったある種奇妙なものも多い。単に絶賛されているだけなら、ゴジラシリーズが好きな人たちが喜んでいるのだろう、程度にしか思わなかったかもしれない。しかし、そうした声を上げる人たちの中には、私と同じように「ゴジラシリーズなど見たこともないし、予告編を見てもクソ映画の予感しかしなかった」という人も数多く含まれていた。そして彼らは、「今まで抱いていたゴジラのイメージと全然違っていた」「これは子供が見ても面白くないだろう」「3.11を思い出さざるを得なかった」などと語っており、シン・ゴジラはどうやら私の予想を超えたものであることを示していた。これだけでもいくぶん興味を掻き立てられたのは間違いないが、何より強く興味を惹かれたのは、やはり感想を語る彼らの熱量だった。何か言わずには言われない、誰かに伝えずにはいられない。そんな興奮がモニタ越しでも隠しきれずに伝わってくる。この感覚には覚えがある。若い頃によく感じた、思いがけない宝物を自分だけが見つけてしまったような興奮だ。感受性の豊かな若者ならともかく、Web上に棲息するこのひねくれた評論家気取りの大人たち(もちろん私を含んでいる)をこうまでさせるなら、是非はともかく必ず何かある。時期はともかく必ず見なければならない。今思えば、こうした流れも庵野監督の思惑通りだったのかもしれない。あのくだらない予告編を作ったのも、庵野監督だった。

日を追うごとにゴジラの感想は増えていった。ブログ、Twitter、メディアサイトのWeb記事・・・ここまで増えてくると、キュレーションメディアにも頻繁に飛び込んでくるようになる。当初はネタバレなしで感想を書き合っていた人たちも、もはやネタバレを抑えて語り続けることに耐え切れなくなったのか、ネタバレありの記事、発言、考察がどんどん増えてくる。ネット上の情報は「時期はともかく」などと言ってられないくらいの量に達していた。ネタバレを先にくらってはたまらない。私はついにあきらめて奥さんを誘い、本当に久しぶりに自分から映画館に向かうことにした。土日の日中は予約でほぼ満席だったが、日曜の夜にいくつか空きを見つけられた。どうせなら4DXにしたかったが、すべての時間帯で満席だったので、通常のシアターで視聴することにした。

目にしたものは、エヴァンゲリオンのようであり、超密度の3.11ドキュメンタリーのようであり、起こり得なかった3.11を描いたシミュレーションのようでもあり、社会人たちが忘れかけていた希望を鮮やかに描いたファンタジーのようでもあった。様々な情報が込められていながら、それらのいずれも作中で多くを語られることはない。濃密な情報の巨大な塊が見る者の前に投げ出され、人々はそこに否が応でも自分の見たいものを見つけてしまう。複雑で難解なものとして見ることもできるが、シンプルに日本の力を結集して怪獣を打ち倒すエンターテインメントとして見ても面白い。それでも面白いんだけど、やっぱり高速で飛び去っていく言葉や情報について知っていればいるだけ、より深く楽しむことができる。そして、いろんなことを語りたくなる。あの人はこれを見て何を語るのだろうか?人に勧めたくなる。感想を聞きたくなる。語った内容によって、人となりが透けて見えてくる。こういうのが見たかったんだよなぁ。それすら忘れていた。

終映後、最も身近な隣人である奥さんの感想をおそるおそる伺ってみると、「3.11の映像を思い出して見てる間じゅうずっと気持ち悪かった。」「長谷川くんはかっこいいなぁ、石原さとみちゃんもかわいかったし。」ということだった。同じ映画を見ても、感じることは本当にまったく違う。そういえば、繰り返しあの洪水の映像を見た人の中には軽度のPTSDになっている人も多いらしい。私は平気だったので気付かなかったが、奥さんは若干その傾向があったようで、悪いことをしてしまったと思う(その前の週にONE PIECE FILM GOLDにつきあったので勘弁してもらいたい気持ちは若干ある)。

奥さんと内容について語り合うことは難しかったが、この映画はまだまだ多くの人に広がっていくだろうし、願わくはそうであってほしいものだ。多くの友人と音信不通状態の私でも、周囲の知人と存分に感想を語り合うことができるように。そして、同じような興奮をもたらしてくれる、次の映画がまた世に出ることができるように。

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