賃貸と持ち家の総費用を様々な条件(ローン金利、運用有無、住宅価格下落率等)で比較する

以前に次のような記事で、住宅価格が20年後に半額になるというニュースにもとづいて、賃貸と持ち家の総費用を比較しました。

前回試算の課題

前回の試算では、おおきく次の3つの課題があったと感じています。

  1. 家賃下落の想定幅が大きすぎる
  2. 住宅購入方法が非現実的
  3. 差額資金を運用していない

家賃下落の想定幅が大きすぎる

前回試算では、家賃は住宅価格の変動に比例して下落すると想定していました。しかし、実際には家賃は住宅価格にあまり追従せず、長期間安定しているため、もっと緩やかな下落を想定した方が現実的です。

住宅購入方法が非現実的

また、住宅購入は現金一括払いを想定していましたが、通常は住宅ローンを組んで金利を負担します。このため、実際は持ち家側の費用負担がより大きくなります。

差額資金を運用していない

最後に、賃貸で買う場合、持ち家に比べると頭金のぶん手元に余裕資金が残ります。これを運用することで、賃貸費用を相殺できます。

今回の試算では、これらの条件を改善した上で、早期リタイアの目標年である2023年から40年間居住した場合の総費用を改めて比較します。

結論&要約

  • 差額の資金を運用できるなら、基本的には賃貸が有利
    • 将来下落するマンションなら運用するまでもなく賃貸が有利
    • 都心の下落しづらいマンションを超低利で購入した場合でようやくトントン

差額を運用しない

比較条件:賃貸(運用無) vs賃貸費用持家費用
周縁部の手頃なマンション フラット356,650万7,373万
大当たりマンション フラット357,207万5,805万
都心のマンション フラット357,207万7,182万
都心のマンション 現金一括購入7,207万5,899万
都心のマンション 変動金利7,207万5,575万

差額を運用

比較条件:賃貸(差額運用) vs賃貸費用持家費用
単利運用 vs 都心の高額マンション フラット354,628万7,182万
複利運用 vs 都心の高額マンション フラット352,745万7,182万
単利運用 vs 都心のマンション 現金一括購入※1,430万5,899万
単利運用 vs 都心のマンション 変動金利※5,574万5,575万

※ 賃貸側は差額を運用する条件なので、比較対象が現金一括購入の場合に運用原資が大きくなることから賃貸の総費用が小さくなっている

試算の前提

住宅を取り巻く諸条件

  • 今後日本全体で人口は急速に減少していく
  • 東京圏の人口/世帯数も、2025年を境に減少していく
  • 2022年に生産緑地指定されていた土地が住宅向けに大量解放される
  • 外国人受け入れによる人口増減要素は未知数

これにより、駅近のマンションを除いて物件価格は大きく下落し、20年間でおよそ半額になるという想定です。

賃貸にかかる費用

賃貸のスペックは次のものを使います。ほぼ私が住んでいる物件のスペックです😅

  • 23区、駅近の1LDK〜2LDK(50〜60m2)程度の物件
  • 家賃は2023年時点で13万円
  • 転居は10年に1度、転居費用は30万円
  • 家賃は10年で4%ずつ下落
  • 家賃の変動は転居(10年)のタイミングで反映
  • 更新料は2年ごとに家賃の1ヶ月分
  • 管理費は3,000円、住居価格の影響が少なそうなので経年では変更しない
  • 火災保険料は年額5,000円

持ち家にかかる費用

  • 賃貸と同程度の立地・広さの新築マンションを想定
  • 取得時の手数料等は購入価格の5%
  • 持ち家は35年の固定金利ローンで購入、頭金は物件価格の10%
  • ローン金利は1.5%、元利均等で返済
  • 住宅ローン控除は全額適用(かなりの高所得を想定)
  • 固定資産税には住宅用地の減免、新築の減免は適用済み
  • 修繕積立金は18万円/年
  • 管理費は18万円/年
  • 火災保険料は8,000円/年
  • 地震保険は5年加入で建物価格に応じて算出
  • 自室の修繕費用は10年ごとに20万円
  • 転居は行わない
  • 持ち家を売却する際の手数料は売却額の5%

試算対象ケースの詳細

次の9つのケースについて賃貸と持ち家の総費用を比較してみました。競った状況での比較をしたいので、持ち家で相対的に有利な、住宅下落:小、住宅価格:高(都心住宅購入)のバリエーションを多めにしています。

#家賃下落ローン住宅下落住宅価格差額運用
14%/10年35年 1.5%4,500万無し
24%/10年35年 1.5%4,500万無し
34%/10年35年 1.5%6,000万無し
44%/10年35年 1.5%6,000万単利
54%/10年35年 1.5%6,000万複利
64%/10年現金一括6,000万無し
74%/10年現金一括6,000万単利
84%/10年35年 0.5%6,000万無し
94%/10年35年 0.5%6,000万単利

ケース1:vs 周縁部の手頃なマンション

勝者:賃貸

価格の手頃なマンションを買う想定です。賃貸に比べて立地がやや悪化する、もしくは築年数が古い物件になると思われます。マンション購入価額は低めですが、時間の経過とともに物件価格が急落します。

家賃下落住宅ローン住宅下落住宅価格差額運用
4%/10年1.5% 35年-4%/年4,500万無し

※ 青線が賃貸の総費用、オレンジ線が持ち家の場合の総費用、赤線は物件を売却して費用を賄った場合の総費用です。基本的には青と赤を比較します。

40年間では賃貸のほうが有利ですが、逆転目前です。ただ、リタイアから40年も経てば何かしらの医療・介護施設への入居が近いと思われるため、あまり先を考える意味はなさそうです。

ケース2:vs 大当たりマンション

勝者:持ち家

ケース1と同程度の物件を買ったにもかかわらず、土地値はまったく下がらず、建物価格も相応にしか下がらないというケースです。物件選びに大成功したケースと言えます。

家賃下落住宅ローン住宅下落住宅価格差額運用
4%/10年1.5% 35年建物のみ-2%/年 20年間4,500万無し

30年あたりで総費用が逆転し、持ち家の方が有利になります。当たりが引けるとでかいですね。今えらぶなら足立区あたりでしょうか…。

ケース3:vs 都心のマンション

勝者:なし(互角)

こちらは、都心の駅近物件を買った結果、土地価格がまったく下がらないケースです。住宅価格が下がらない立地、かつ賃貸と同程度の広さの新築マンションはかなり高くなるため、物件価格を引き上げています。

家賃下落住宅ローン住宅下落住宅価格差額運用
4%/10年1.5% 35年建物のみ-2%/年 20年間6,000万無し

高価格物件ですが、それでも物件売却価格が高い分ケース1より総費用は抑えられており、40年を目前にして持ち家の方が安くなっています。やはり中途半端な場所を買うよりも、資産価値が残る物件を買ったほうがいいのか…。

ケース4:vs 都心のマンション with 単利運用

勝者:賃貸勝者:持ち家

ケース3をもとにしていますが、初期費用の差額約600万円を原資とし、毎年の費用の差額も毎年追加投資していくケースです。この投資資金を年利3%(税引後2.4%)で運用し、各年の運用益は毎年の賃貸費用の支払いに充てます。

家賃下落住宅ローン住宅下落住宅価格差額運用
4%/10年1.5% 35年建物のみ-2%/年 20年間6,000万単利

運用想定は現実的なレベルと思いますが、持ち家の売却を考慮しても2,300万円ほど賃貸が有利になっています。積み立て運用強し。

ケース5:vs 都心のマンション with 複利運用

勝者:賃貸

先程とほぼ同じ条件ですが、こちらは差額の費用を積み立てながら運用益を非課税再投資して複利運用し、運用益を最後の年に一括で累積費用から差し引くケースです。受取時には20%の税金を差し引きます。

家賃下落住宅ローン住宅下落住宅価格差額運用
4%/10年1.5% 35年建物のみ-2%/年 20年間6,000万複利

4,000万円程度賃貸が有利になっています。もう少しで新しいマンション買えちゃいますね…。40年の積立複利運用は強烈です。

ケース6:vs 都心のマンション with 現金一括購入

勝者:持ち家

ここからは早期リタイア向けの想定です。例えば私の場合、2023年~の期間はリタイアしている想定のため、控除可能な所得税・住民税が非常に少なく、住宅ローン控除の恩恵が小さくなります(年額15万円、合計100万程度)。住民税を申告すれば控除額は倍近くにはなりますが、その場合は合計所得金額が増え、国民健康保険料が増える可能性が高まります。

既にリタイアしている場合は住宅ローンを組むことも難しいでしょうから、現金一括購入も選択肢に入ってきます。

家賃下落住宅ローン住宅下落住宅価格差額運用
4%/10年現金一括建物のみ-2%/年 20年間6,000万無し

この場合、住宅ローンの金利負担がないことから、ローンを組んだケースと比べて10年ほど早く持ち家が有利になっています。

ケース7:vs 都心のマンション with 現金一括購入 単利運用

勝者:賃貸

持ち家の条件はケース6と同じですが、持ち家との差額を単利3%で運用し、運用益を賃貸費用の支払いに充てます。余った金額は順次投資元本に積み立てます。

家賃下落住宅ローン住宅下落住宅価格差額運用
4%/10年現金一括建物のみ-2%/年 20年間6,000万単利

さすがに6,000万円もあると、運用益だけで賃貸費用をほとんどまかなえてしまいます。最終的には4,300万円程度賃貸が有利に。

ケース8:vs 都心のマンション変動金利

勝者:持ち家

ケース3(都心のマンションをローン購入)をベースとして、ローン金利を0.5%に下げたものです。現在の金利環境が35年続く想定で、変動金利で借りたケースですね。

家賃下落住宅ローン住宅下落住宅価格差額運用
4%/10年0.5% 35年建物のみ-2%/年 20年間6,000万無し

やはり低利のローンは有利ですね。25年程度で総費用が逆転し、最終的には約1,800万円持ち家が有利になっています。

ケース9:vs 都心のマンション変動金利 with 単利運用

勝者:なし(互角)

ケース8をベースとし、賃貸側が差額を単利運用して家賃に充てたケースです。

家賃下落住宅ローン住宅下落住宅価格差額運用
4%/10年0.5% 35年建物のみ-2%/年 20年間6,000万単利

40年時点では、おおよそ同程度の費用負担になっています。

所感&まとめ

費用の面だけで言えば、差額資金を税引前3%で運用できるなら、総じて賃貸が有利だということです。将来下落するマンションなら運用を考慮するまでもなく賃貸が有利ですし、都心の下落しづらい高額マンションを超低利で購入した場合でようやくトントンぐらいです。

ただし、賃貸仕様のマンションと都心の高額マンションでは地理的条件は似通っていても、居住性は段違いです。賃貸仕様でも居住性に不満がないのであれば、賃貸で通した方が費用面ではかなり有利です。居住性が気になる方は結局、お金を支払ってマンションを買うなり、分譲仕様の賃貸物件を借りることになるでしょう。※

なお、この記事はあくまで費用(とほんの少しの居住性)を比較したものです。賃貸と持ち家ではその他に様々なリスクや便益が異なりますので、さらに多面的な検討が必要となるのは言うまでもありません。

※ 分譲仕様の賃貸と都心マンション購入はきちんと比較していませんが、分譲仕様の家賃を20万とすると、およそ費用は1.5倍になるので、グラフの右側到達点を1.5倍ほど上にずらして見ればおおよそあたりはつくと思います。

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