投資本の雑な感想:LIFE SHIFT

あまりに有名すぎる本で今さら感がありますが…原題は The 100-Year Life – Living and Working in an Age of Longevity。直訳だと、100年の人生 – 長寿時代の生活と仕事、といった感じでしょうか。ほぼ忠実な訳題ですね。

目次です。

日本語版への序文
序 章 100年ライフ
第1章 長い生涯――長寿という贈り物
第2章 過去の資金計画――教育・仕事・引退モデルの崩壊
第3章 雇用の未来――機械化・AI後の働き方
第4章 見えない「資産」――お金に換算できないもの
第5章 新しいシナリオ――可能性を広げる
第6章 新しいステージ――選択肢の多様化
第7章 新しいお金の考え方――必要な資金をどう得るか
第8章 新しい時間の使い方――自分のリ・クリエーションへ
第9章 未来の人間関係――私生活はこう変わる
終 章 変革への課題

長寿がもたらす社会と個人への重圧

端的に言えばこの本は、長寿が個人の人生と社会へどのような影響をもたらすかを読み解き、今後起きるであろう…そして今既に起きつつある人生のスタイル変化をいくつかの観点や想定シナリオで描き出す、というものです。

これまでの人生は皆が同じ3ステージ制だった

工業化以降の世界の多くの地域で、人々は次の3つのステージに従って生きてきました。

  1. 子供:スキルの獲得
  2. 勤労者:金銭、不動産等の獲得
  3. 引退者:金銭の取り崩し

日本では強力な解雇規制も手伝って、40年以上同じ企業に勤め上げる形が一般的でした。しかし、ここのところ徐々に転職が増え、40歳以降でキャリアパスを構築しなおす人も増えてきました。企業側でも45歳以上の余剰人員を早期退職させる動きが活発になってきています。

こうした流れの背景には、国内産業に対する利益率向上の圧力と、個人に対する長寿化の影響がまざりあっていると感じます。こうして複数の課題が重なりあうのは日本でよく見られるパターンですね。国内産業に対する利益向上圧力の背景については、以下や伊藤レポート等を参照ください。

バランスシート不況と追われる国の効果

欧米先進諸国の場合は国内産業への圧力が先行し、雇用流動化が進んだ後に長寿の影響が顕在化してきたため、こうした動きも段階的に進んできました。日本の場合、これらが同時に顕在化してきたため、欧米諸国に比べると急速に変化が起きる可能性もあります。

長寿がもたらす摩擦と課題

さて、企業の利益率の問題はいったん置いておき、3ステージを生きる個人に対して長寿化がもたらす不都合な点に目を向けてみます。

  • 引退後の期間が長過ぎるため、これまでの働き方では引退後の資金が不足する
  • 上記を補うには勤労者時代に過酷な労働と過剰な貯蓄が必要となり、家族や友人との関係が悪化したり、健康を損なったりする
  • 同様に、資金不足を補うために引退を先延ばしすると、子供時代に身に着けたスキルだけでは長すぎる勤労時代を乗り切ることができず、終盤は不本意な労働に従事することになる

まさに現代、多くの労働者が悩んでいる問題が凝縮されているんじゃないでしょうか。

先例なきマルチステージへの移行

LIFE SHIFTでは、個人がこうした課題にうまく対処するために3ステージではなく3.5、4、5…といったマルチステージの人生に切り替える必要がある、と提案しています。この本の骨子はまさにここですね。

個人が管理すべき4つのリソース

本書はさらに、個人が創出・維持・費消するリソースを以下の4つに分類しています。

  1. 生産性資産:労働によって価値を生み出すスキル・知識や仲間、評判等
  2. 活力資産:肉体的・精神的な健康と幸福、家族や友人との良好な関係等
  3. 変身資産:超長期を生きる人が人生の途中で変身を遂げるための人的ネットワークや精神的態度
  4. 有形資産:金銭、不動産等の財産

各自が人生のステージ構成を検討する際には、これらのリソースが底をつかないようにプランニングするべし、ということで、ある種のフレームワークのようなものですね。

リタイア界隈では4の有形資産に関する議論が活発なのはもちろんですが、1〜3に関する議論も常に根強くなされています。長い人生を過ごしていくためには、金銭だけでなくその他の資産も無視し難いことを直感的に理解しているのだと思います。

マルチステージの多様な姿、新たな形態

マルチステージの形態は多様で、寿命が80歳程度であれば3ステージの多少の変形でなんとか乗り切れるかもしれません。40〜45でサバティカル(1年程度の休暇と学習)を取り、新たなスキルを追加して後半を乗り切る、といった形ですね。

これが寿命100年を超える世代となると、この程度ではスキルの劣化や資金不足をごまかしきれなくなってきます。このため、本書ではいくつかのステージを想定しています。

  • エクスプローラー:有形資産をある程度犠牲にし、探求しながら自分自身への理解を深め、変身資産を中心により強固に無形資産を蓄積するステージ
  • インディペンデント・プロデューサー:小規模なスケールで自らの職を生み出し、「評判」を確立しながら無形資産を蓄積・維持するステージ
  • ポートフォリオ・ワーカー:仕事をいくつかに分割し、有形資産だけでなく活力資産や変身資産を獲得する仕事を組み合わせることで、資産のバランスを取るステージ

どれもセミリタイア志望者や実践者が多かれ少なかれ検討・実践しているもので、馴染み深い人も多いんじゃないでしょうか。

直ちにマルチステージへ移行すべきなのか

こうした個人の欲求に応えるために、本書は政府や企業が制度を整えていく必要があり、長い目で見ると実際にそうなっていくと考えています。しかし、現状では個人と政府・企業の利害は対立しており、変化は想像以上に遅々としたものになる可能性がある、と記しています。

個人的には私も同じように考えており、一部企業はこうした動きを加速させていくでしょうが、社会全体としてはマルチステージへの理解は遅々と進まないだろうと思います。それは、2000年前後にも似たような話があったものの、結果として20年間思ったほど大きな変化が見られず、先走った人は逆に社会の逆風を受けて苦杯をなめた人が多かったからです。

なので、いきなり「俺はエクスプローラーだ!!」といって放浪に出たり、「これからはインディペンデント・プロデューサー、Youtuberになる!」といっていきなり半無職化するのは、しばらくの間はかなりリスクの大きな行動になるのは間違いないです。まずは、副業という形でポートフォリオ・ワーカーを目指すのが良いのではないかと感じます。

セミリタイア・早期リタイアプランニングのフレームワークに

早期リタイア・セミリタイアという生き方はそもそも、従来の3ステージ型を離脱して3.5〜ステージの人生を生きる、ということを意味するため、これは本書で言うところのマルチステージ型人生の一形態と見ることができます。

さらに、セミリタイアに向けて議論が発散しがちな交友関係、生きがい、家族との関係、バックアップとしての労働などの無形資産について明確に管理すべき資産として定義し、新たなステージ形態とあわせて人生を組み立てる枠組みを作ってくれています。これは、セミリタイアや早期リタイアを視野に入れて人生をプランニングする上で、なかなか良い枠組みとなると感じました。

私はこれまで、セミリタイア・早期リタイアのための枠組み・フレームワークとして「金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント」を利用してきました。

この本は主に有形資産と生産性資産に関する本で、この2つに関しては非常にうまく体系化されています。本書の示す活力資産や変身資産、ステージの概念は、これらと組み合わせることで人生全体をプラニングするための良い土台になると思います。筆致自体は若干固くて読みづらい面もありましたが、リタイア界隈で良く言及されていた理由はよく理解できました。

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