バランスシートに人的資産・負債を組み込む

破天荒な経営者たちに影響を受け、我が家の資本配分を効率化する上で前提となる情報を整理するため、金融資産だけでなく人的資産や年金も組み込んで世帯の現状を確認してみます。

資本配分によってリターンを3〜10%向上させる達人たち

はじめに断っておきますが、わりと強引に当てはめているので細かい部分ではおかしなところも多いです。

人的資産の現在価値を算定する

人的資産とは何かというと、労働者である私や妻を、毎月利子や配当をもたらす金融資産(債券や株式)とみなしたものです。その価値を算出するには、将来稼ぎ出すお金を現在価値に割り引いた上で合算します。

現在価値と割引率

将来稼ぐ金額の単純な合算ではなく稼ぐ時点に応じて割り引くのは、将来もらえる現金は今手元にある現金に比べると、将来時点までに得られる金利分価値が低いからですね。また、確実にもらえるわけではない場合はリスクプレミアムとして割引率が上乗せされます。
1年後に稼ぐ給与Sは、割引率rを使って S÷(1+r)とし、n年後は同様に S÷(1+r)^nで計算し、すべて合算します。

割引率のベースは国債の長期金利を使い、これにリスクプレミアムを上乗せします。現在の長期金利は0〜0.15%程度ですが、1%前後のインフレ率との乖離が大きくなってきていることから1%に設定しています。次にリスクプレミアムですが、私と妻は伝統的な日本企業の勤務、職種その他の環境的条件から解雇リスクが小さくかなり債券寄りな資産のため、リスクプレミアムとしては3%を付加して割引率は4%としました。

生活負債

さて、労働者が将来稼ぐお金は資産ですが、労働者が働き続けるには生活費として継続した支出も必要です。世帯の資産をすべて把握するには、この生活費の支払い義務を債務として組み込む必要があります。考え方としては、労働資産を調達・維持するために借金をしているのに近いです。

生活負債の現在価値を算出する方法は、労働資産の場合とほぼ同じです。将来の支出を割引率で現在価値に割戻し、合算します。生活費は私にとってはほぼ確実に発生する支払いなので、割引率にリスクプレミアムは上乗せしていません。正直、これは結構怪しいと思ってはいます。

また、インフレを考慮して年を経るごとに生活費は上昇させています。結果として割引率はインフレ率で相殺され、単純に合算した場合と同じ金額になっています。

公的年金、退職金等

公的年金、確定給付年金、退職金等、将来給付されるものも同様に割引いて現在価値を計算しています。こちらの割引率にリスクプレミアムは上乗せしていません。厳密には企業年金と退職金には上乗せした方がいいんでしょうが、額も小さく面倒臭いので無視しました。

バランスシート:ケース別

左側が資産の内訳、右側が資本・負債の状況です。

私のみ早期退職するケース

私が4年後にリタイア、妻が60まで働く場合のバランスシートです。私の人的資産が非常に小さく、自己資本比率は16%程度です。過去3年利益を基にしたROEは23%、ROICは4.45%となりました。

夫婦ともに60歳まで働くケース

私の人的資本がかなり充実し、自己資本比率は37%まで高まります。過去3年利益を基にしたROEは9.18%、ROICは同じく4.45%です。

夫婦ともに早期退職するケース

二人とも46歳で引退するケースです。現状1,000万円程度の債務超過になっていますね…。

世帯事業の見通しとBSの改善

この世帯の主な利益は、人的資本からの給与収入と有価証券からの運用益です。主な費用は、生活負債の返済です(厳密には会計的にも税務的にも費用にはならなそうですが)。

年を経るごとに、人的資本は給与所得、生活債務は生活費を発生させるとともに資産・債務本体は減少していき、差分が利益として現預金と有価証券に振り替わっていきます。ただ、この動きでは自己資本比率は改善しません(のはずです)。

一方、有価証券運用益も同様に現預金や有価証券に振り替わっていきますが、こちらは自己資本比率の改善に寄与します。二人共早期リタイアするケースでも債務超過は1,000万程度ですが、これはリタイアまでの数年間に順調に運用益が出れば、おおよそ解消されると思われます。

劇的にBSを改善したいのであれば、手っ取り早いのは人的資本の価値を増やすこと=収入を増やす、もしくは長期間働くことです(嫌ですが)。もしくは生活債務の圧縮、つまり生活費をさらに引き下げることです。

ROEを改善したい

ROEは勤続年数次第で簡単に激変するので、ここまで色々とBSに組み込んでしまうと、なかなかまともな指標として機能しませんが。。ケースを固定して考えてみましょう。

人的資本のROIC改善

人的資本が生み出す利益に目を向けた場合、生活負債が投下資本に含まれるとなると、長生きするほど、生活費が高いほど、そして給与が低いほどROICが下がります。改善するなら、鬼のように働いて稼ぎ、生活は極貧、できるだけ早く死ぬのがROICを高めるコツ…?辛すぎる😅

人的資本を切り離せるなら、生活債務ごとさっさと切り離すと思いますが、残念ながら本人なので…やはりせめて、46歳以降も何かしら収入があるとよろしいのでしょうね(目を逸らしながら)。

有価証券のROIC改善

人的資本の最適化はあまりに辛すぎるので、有価証券の運用益を高めてROICを改善する方向で頑張りたいですね(働けよという意見から目を背けながら)。頑張っていますが、厳しい話だ…。

財務レバレッジの強化

財務レバレッジをかけるのもROE改善には有効な手段です。最有力は収益不動産や事業投資でしょうが…さすがにここまで負債が多い状況でさらに負債を増やすというのはいかがなものかという感じがしますね。。

めちゃくちゃ制約が多い…

当然のことではありますが、法人と比べると色々と制約が多く、できることが少ないです。。

  • 株式発行による資本調達ができない
  • 自社株買いで資本効率を高めることができない
  • 人的資本と生活負債がセットでつきまとう
  • 生活負債が巨大すぎ、さらなる財務レバレッジの拡大には慎重にならざるを得ない

最初の2つはまぁ今更なんですが、最後の2つ、特に最後の項目はこうしてBSにしてみると想像以上に強烈ですね。「いつ何かあって収入が途切れるかわからないのだから、借金をするのが怖い」というのは巨額の住宅ローンの是非を議論する際に必ず出てくる意見ですが、こうして見るとさもありなん、というところ。

私が自分で言うのもなんですが、我が家は都心住まいにしてはそこそこ生活費を抑えており、かつ世帯収入はかなり高い方です。にも関わらず、60まで働く想定でも自己資本比率は37%に過ぎません。。片働きの人、さらに住宅を買った人などは、ほとんどのケースですさまじい債務超過になっているのではないでしょうか…?

出来ることは少ないが気づきはあった

世帯のBSや利益率改善に向けてできることはあまり思いつきませんでしたが、こうして現在価値に割引いて可視化してみることで色々と気づきはありました。特に生活負債の圧倒的なスケール、それによるBSの激しい毀損ですね…。

これが、アメリカ優良企業のように確実に日銭が入ってくるというのであれば許容されるのでしょうが、それはつまり世帯構成人員が超長期で働き続けることを意味しますし、それが嫌なら安定的な資産収入を作り出すしかありません。

ごくごく普通の結論になってしまいましたが、個人的には面白かったです。

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