節税狙いの年金の受け取り方@早期リタイア

国民年金やiDeCo等の各種公的年金は、受給開始時期や受給方法(一時金、年金)を選ぶことができます。これらは受け取り方(の組み合わせ)によって、税金の額が大きく変わってくることが知られています。

加えて、早期リタイアでは望ましい年金の受け取り方も通常とは変わってきます。今回は、早期リタイアした場合の年金の受け取り方を、以下の2つの観点から検討します。

  1. 税金の控除枠をなるべく多く使い切ること
  2. 住民税非課税世帯の対象となること

サマリ

  • 早期リタイアでは、確定拠出年金は一時金での受け取りががより有利
  • 一時金受け取りは、リタイア後15年経つまで保留した方が得
  • 住民税非課税世帯を狙うと、国年厚年の繰上げ受給が必要となりやすい
  • 国年厚年の繰り上げは長生きリスクの対処力を落とすため、慎重な検討が必要

税金控除枠の使い切り

年金受け取り時に使える税金の控除枠は、退職所得控除と公的年金等控除の2つがあります。一時金で受け取る場合は退職所得控除、年金として受け取る場合は公的年金等控除を使います。退職金/年金と控除枠の関係を以下の表に示します※1。

控除枠退職金国民年金厚生年金確定給付年金確定拠出年金
退職所得控除△※2△※2
公的年金等控除△※2△※2

※1 障害給付や遺族給付は考慮しない
※2 受け取り方によって異なる

退職所得控除は退職金と枠を取り合うことになるので、退職金を含めて考える必要があります。

年金の種類と受け取り方法

つぎに、年金の種類と受け取り方、受給開始年齢を確認します。国年厚年は終身年金でのみ受け取れます。企業年金の場合はそれぞれの制度によって異なりますが、一時金受け取りができるものや、年金と一時金を組み合わせて受給できるものが多いです。

年金の種類一時金有期年金組み合わせ終身年金受取開始年齢
国民年金×××60~70歳で選択
厚生年金×××60~70歳で選択
確定給付年金△※△※△※△※50歳、60~65歳等
確定拠出年金△※△※△※△※60~70歳で選択

※各年金の規約によって異なる

各控除枠の確認

退職所得控除

退職所得控除は以下の式で計算します。確定拠出年金の場合は、拠出期間=勤続年数で計算します。拠出せずに運用指図のみだった期間は勤続年数に入らないので注意が必要です。

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円×勤続年数
(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超800万円+70万円×(勤続年数-20年)

公的年金等控除

公的年金等控除は、やや複雑です。以下の表の(a)×(b)-(c)で所得金額が決まります。つまり、控除額は(c)+(1 – (a))になり、65歳未満なら130万以上、65歳以上なら330万以上の年金収入がある場合、収入に応じて少しずつ控除額が増えていきます。

年齢(a)公的年金等の収入金額の合計額(b)割合
(c)控除額
65歳未満700,001円から1,299,999円まで100%700,000円
1,300,000円から4,099,999円まで
75%
375,000円
4,100,000円から7,699,999円まで85%785,000円
7,700,000円以上95%1,555,000円
65歳以上1,200,001円から3,299,999円まで100%
1,200,000円
3,300,000円から4,099,999円まで75%375,000円
4,100,000円から7,699,999円まで85%785,000円
7,700,000円以上95%1,555,000円

とはいえ、早期リタイアの場合、現役時代に相当高収入だった場合を除けばほとんどは65歳未満:70万円、65歳以上:120万円になります。

具体的なケースで考える

では、ここからは具体的なケース(私の場合)にあてはめ、次のような流れで望ましい受け取り方を確認していきます。

  1. 引退時期や加入している年金制度等の前提を整理
  2. 受給方法や時期が確定している年金について、控除枠に配置
  3. 控除枠の残分をみながら、未確定年金の受給方法や受給時期を確認

引退等の条件

  • 2025年3月に退職
  • 規約型年金は2001年4月~2014年4月まで加入
  • 基金型年金は2001年4月~退職まで加入
  • 確定拠出年金は2014年4月から加入、退職後も60歳まで拠出を続ける
  • 国民年金は満額拠出

加入している年金制度

私の所属する企業では、確定給付年金と確定拠出年金の両制度が併存しており、さらに確定給付年金にも規約型年金と基金型年金の2つが併存しています。合計3制度あるということですね。多い。

規約型年金は確定拠出年金に移行し、現在は新規拠出は行われていませんが、過去拠出分を給付する機能だけが残されています。 私の場合、46歳で早期退職してしまうと規約型年金の受給要件を満たせないため、一時金相当として受け取ることになります。

年金の種類一時金有期年金組み合わせ終身年金受取開始年齢
国民年金×××60~70歳で選択
厚生年金×××60~70歳で選択
規約型年金○※1○※1○※2×50歳~
基金型年金×××60歳
確定拠出年金○※260~70歳で選択

※1 50歳未満で退職した場合は強制的に一時金として受け取り
※2 一時金率25%、50%、100%から選択可能

受給方法、時期が確定しているもの

まず、この時点で受給方法や時期が確定しているものです。退職金は一時金として退職時に受け取りますし、規約型年金も同様です。基金型は終身年金としてしか受け取れず、受給開始時期も固定です。

  • 退職金を退職時に受け取り
  • 規約型年金は退職時に脱退一時金として受け取り
  • 基金型年金は終身年金として60歳から受け取り

確定していないもの

一方、受給方法や時期をある程度自由に選べるのがこちらです。これらをうまく控除枠に割り当てていく必要があります。

  • 国民年金、厚生年金の年金受け取り開始時期
  • 確定拠出年金の受け取り方法、受け取り開始時期

退職所得控除枠の状態

さて、まずは退職所得控除の方です。一時金で受け取るものを対象に、時系列で控除枠の変化を整理してみました。ここに確定拠出年金の一時金受給を入れ込む余地があるか考えていくことになります。

時期控除枠退職金規約型残枠
2025年 3月:46歳1080万※1864万336万-120万
2026年80万80万
2027年80万80万
2028年120万120万
2034年360万※2360万
2035年430万※3430万
2038年:60歳640万※4640万
2039年:61歳640万640万
2040年 4月以前640万640万
2040年 4月以降1080万※51080万
2041年1080万1080万

※1 800万円+70万円×(24年-20年)=1080万円
※2 40万円×20年-40万円×11年=360万円
※3 800万円+70万円×(21年-20年)-40万円×11年=430万円
※4 800万円+70万円×(24年-20年)-40万円×11年=640万円
※5 800万円+70万円×(24年-20年)=1080万円

退職時点でいったん控除枠を使い切っていますが、以後少しずつ枠が復活し、確定拠出年金が受給可能になる60歳の時点では640万の枠があります。また、62歳になると14年制限から開放されるため、拠出期間(36~60歳の24年)すべてが勤続年数扱いとなり、一気に枠が拡大します。

早期リタイアで特殊なのは、このように退職金受け取りタイミングと確定拠出年金の受給タイミングが大きく離れることでしょう。これによって、確定拠出年金の一時金受け取りが有利になります。

また、通常のリタイアであれば満たしづらい確定拠出年金控除の14年ルールを回避しやすいのも大きな特徴です。これを利用することで、リタイア後にiDeCo拠出を続けたとしても満額を非課税で取り出しやすくなります。

私の場合、iDeCoで毎月フルに拠出する(81.6×14=1142万)と、退職まで積み立てた約240万円もあわせて控除枠をはみだしてしまいますが、多少拠出額を抑えるか、分割して一部を年金受け取りにまわせばうまく非課税で受け取れそうです。

公的年金等控除枠の状態

次は、年金受け取りでの控除枠の状態です。国民年金と厚生年金を同時期に受け取ると想定し、60歳の繰り上げ受け取り、65歳の通常受け取り、70歳の繰り下げ受け取りの3パターンで経年整理してみました。

年齢基金型厚年:60残枠厚年:65残枠厚年:70残枠
60歳70万21万141万-92万70万70万
61歳70万21万141万-92万70万70万
62歳70万21万141万-92万70万70万
63歳70万21万141万-92万70万70万
64歳70万21万141万-92万70万70万
65歳120万23万141万-44万202万-105万97万
66歳120万23万141万-44万202万-105万97万
67歳120万23万141万-44万202万-105万97万
68歳120万23万141万-44万202万-105万97万
69歳120万23万141万-44万202万-105万97万
70歳120万23万141万-44万202万-105万286万-189万
71歳120万23万141万-44万202万-105万286万-189万

厚生年金の枠が大きすぎて、どのパターンでも厚生年金の受給がはじまった途端に全枠使い切ってしまいます。

望ましい受け取り方

退職所得控除枠は大きいですが、年金の控除枠はかなり窮屈(繰り上げ受給した場合の残枠はゼロ)です。つまり、税金の面から見ると、確定拠出年金は出来る限り一時金として受け取るのが良いということになります。

退職所得控除枠からはみ出す部分は、60~65歳の年金控除枠で受け取れると良いですが、これには年金を繰り上げ受給しないという条件が必要になります。また、ふつうの確定拠出年金だと年金給付は一時金給付以降に開始され、年金支給期間は最低5年なので、14年制限を回避する目的で62歳以降に受給を開始すると、最低でも67歳まで控除枠を使うことになります。さらに、60~62歳の控除枠が無駄になります。

枠の使い切りだけを考えるなら、確定拠出年金は62歳以降に一時金で受け取り、厚年は60歳で繰り上げ受給すれば無駄がないといえます。さらに、iDeCo拠出は満額から少し抑えれば(運用結果次第にはなりますが)すべて非課税で受け取れる可能性が高まります。

住民税非課税世帯への道

もう一つの課題は、住民税非課税世帯に対応した受け取り方の検討です。住民税非課税世帯になれば、国民健康保険料や高額医療費が大幅に減額されるため、可能であれば達成したいところです。

非課税世帯となるためには、世帯員全員の均等割・所得割をともにゼロにする必要があります。均等割ゼロを達成すれば所得割も自動的にゼロになるので、ここでは均等割についてのみ考えます。私の世帯は私と奥さんの二人ですが、私の所得がそれなりに多いため、奥さんを配偶者控除とし、私の均等割条件の緩和を狙います

年齢基金型厚年:60残枠厚年:65残枠厚年:70残枠
60歳70万21万141万-92万70万70万
61歳70万21万141万-92万70万70万
62歳70万21万141万-92万70万70万
63歳70万21万141万-92万70万70万
64歳70万21万141万-92万70万70万
65歳120万23万141万-44万202万-105万97万
66歳120万23万141万-44万202万-105万97万
67歳120万23万141万-44万202万-105万97万
68歳120万23万141万-44万202万-105万97万
69歳120万23万141万-44万202万-105万97万
70歳120万23万141万-44万202万-105万286万-189万
71歳120万23万141万-44万202万-105万286万-189万

配偶者

配偶者控除対象とするには、合計所得金額を35万円以下にする必要があります。これは、年金受給額で換算すれば155万円以下です。…微妙ですね。奥さんも厚年に入っているので、繰り上げ受給しないと155万円以下は難しいかもしれません。まぁ、将来は年金支給額自体下がっているかもしれませんが…。60歳手前で状況確認し、繰り上げ支給で枠に収められそうなら検討する、といったところでしょうか。覚えてられるかな。

本人

私の場合は、奥さんが配偶者控除に入っている前提で合計所得金額が35万×2+21万=91万円以下になればOKです。年金受給額だと211万円以下ですね。65歳受給開始時の支給額は235万円なので、1年強は繰り上げ受給しないとオーバーしてしまう微妙なライン

望ましい受け取り方

奥さんが控除対象になれるなら、私の支給時期も繰り上げることで非課税世帯入りできる可能性が高いです。

結論

控除枠を使い切る観点からは、確定拠出年金は14年制限が解除されたタイミングで一時金受け取りしつつ、厚生年金を繰り上げ受給するのが良いという結論になります。この場合、住民税非課税世帯への道も拓かれます

しかし、年金は長生きリスクに対する保険であるからして、無用な繰り上げ受給は避けるべし、との立場からすると、むしろ厚生年金は繰り下げ受給するべきで、その場合は公的年金控除枠の無駄は増えますし、住民税非課税世帯になるのも不可能になります。

現段階では、長生きリスクへの対処を優先する方向に傾いていますが、私が60歳になる頃には税制が変わって非課税基準が変更になっている可能性もありますし、年金支給額が下がって余裕で非課税世帯入りできる可能性もあります。60歳が近づいたら、また税制等を確認し、改めて検討しようと思います。

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