投資本の雑な感想:ホモ・デウス

サピエンス全史の巻末で未来の超人類について語ったユヴァル・ノア・ハラリが、その超人類を中心として、今後人類が向かう先にフォーカスを当てて語った本。投資本では…ないんですけども。長期的な経済・世界観について気付かされる部分もあったので。

目次はこんな感じ。

第1章 人類が新たに取り組むべきこと
生物学的貧困線/見えない大軍団/ジャングルの法則を打破する/死の末日/幸福に対する権利/地球という惑星の神々/誰かブレーキを踏んでもらえませんか?/知識のパラドックス/芝生小史/第一幕の銃

第1部 ホモ・サピエンスが世界を征服する
第2章 人新世
ヘビの子供たち/祖先の欲求/生き物はアルゴリズム/農耕の取り決め/五〇〇年の孤独
第3章 人間の輝き
チャールズ・ダーウィンを怖がるのは誰か?/証券取引所には意識がない理由/生命の方程式/実験室のラットたちの憂鬱な生活/自己意識のあるチンパンジー/賢い馬/革命万歳!/セックスとバイオレンスを超えて/意味のウェブ/夢と虚構が支配する世界

第2部 ホモ・サピエンスが世界に意味を与える
第4章 物語の語り手
紙の上に生きる/聖典/システムはうまくいくが……
第5章 科学と宗教というおかしな夫婦
病原菌と魔物/もしブッダに出会ったら/神を偽造する/聖なる教義/魔女狩り
第6章 現代の契約
銀行家はなぜチスイコウモリと違うのか?/ミラクルパイ/方舟シンドローム/激しい生存競争
第7章 人間至上主義
内面を見よ/黄色いレンガの道をたどる/戦争についての真実/人間至上主義の分裂/ベートーヴェンはチャック・ベリーよりも上か?/人間至上主義の宗教戦争/電気と遺伝学とイスラム過激派
第8章 研究室の時限爆弾
どの自己が私なのか?/人生の意味
第9章 知能と意識の大いなる分離
無用者階級/八七パーセントの確率/巫女から君主へ/不平等をアップグレードする
第10章 意識の大海
心のスペクトル/恐れの匂いがする/宇宙がぶら下がっている釘
第11章 データ教
権力はみな、どこへ行ったのか?/歴史を要約すれば/情報は自由になりたがっている/記録し、アップロードし、シェアしよう! /汝自身を知れ/データフローの中の小波
謝 辞
訳者あとがき

サピエンスは神へと進化する

人類は21世紀に入り、何千年と続いた戦争、飢餓、疫病をついに克服したように見える。ならば人類はこの先何の課題解決を目指すのか?それが、不死、永遠の幸福、神への進化だという。

なぜサピエンスは人のままでいられないのか?

人類が三つの課題「戦争」「飢餓」「疫病」を克服したとして、なぜその先、超人類(ホモ・デウス)を目指すのか?このままホモ・サピエンスのままでいる、ということはないのだろうか?

それは、課題を克服し、再発を押さえ続ける力の根源が、人間至上主義、資本主義、科学技術だからだという。なかでも資本主義は、現状維持のために耐えざる成長を必要とし、そのためには莫大な投資機会を必要とする。その格好の対象が、人間そのものをターゲットとした課題の解決であり、不死と幸福の実現なのだ。

ここまで難しく考えなくても、人…特に満たされた人である皇帝や王族は、これまでも不死や永遠の幸福感、神への進化を求めてきた。従来の大きな課題が片付いた今、そこへ向かうという予測は確かにごく自然なことにも感じる。では、サピエンスが神になる時、一体何が起きるのか?

サピエンスが神になる時、何が起こるのか?

予測は非常に難しいが、歴史を振り返ることでいくつかヒントを得ることはできる。

科学と宗教が織りなす人類の歴史

これまで人類は、技術・知識水準が進展するに伴って、狩猟採集、農耕・手工業、工場労働、知的生産とその生活様式を変遷させてきた。そして、それぞれの知識水準や生活様式を正当化するための共通幻想として、宗教を発明してきた。

例えば、人類が狩猟採集しながら暮らしていた時代、その宗教はアニミズムであり、あらゆる生物や無機物は魂を持ち、人と対等の存在とみなされた。

農耕社会になり、それまで対等であった動物の一部は家畜、すなわち人の道具となると、人はもはや彼らに魂も意思も情動も認めず、道具としてその生殺与奪を握るようになった。この時、人はアニミズムでは自身の行動を正当化できなかったため、一神教を編み出して人を特別な存在と位置づけ、同時に家畜に魂がないものへと格下げして現存する世界を説明する理を与えた。

その後、科学が発達して自然や人間、進化について解明が進み、一神教では世界を説明しきれなくなると、世界に理を与える新たな宗教として人間至上主義(ヒューマニズム)が編み出され、人間の魂と自由意志が何よりも重要なものとなり、もはや神は不要な存在と成り果てた。

ホモ・デウスにふさわしい宗教がヒューマニズムを駆逐する

そして今、生物工学によって自由意志や魂の不在が明らかになりつつあり、本人よりも外部のセンサーや蓄積された行動ログの方が正確に意思を知ことができるようになりつつある。また人工知能の勃興によって知能と意識が分離し、意思が必ずしも知能に必要ではないことが浮き彫りになりはじめた。

この先、さらにこうした事実が深まり、また人が自身をアップグレードする行為が身近になっていくにつれ、新たな宗教が台頭し、人間至上主義は次第に力を失っていくだろう。

この本では、現れつつある新たな宗教の候補として「テクノ人間至上主義」と「データ教」が挙げられている。

旧人類はどうなるのか?

現実的には、旧人類は次第にアップグレードされ、少しずつ神に近づいていく可能性が高い。そうした場合、同一文化圏では旧人類とホモ・デウスが混在して対立するような状況はそこまでおおっぴらにならない可能性が高い。

しかし、今日でもイスラム圏などでは1世代前の宗教が固く信じられており、密林の奥地では狩猟採集生活とアニミズムが残っていることから考えると、一部の地域ではヒューマニズムに基づく文化圏が残ることは十分考えられる。

そうなった場合、単なる生活様式や文化だけでなく、生物的な能力すら異なるホモ・デウスが旧人類に対してどう振る舞うかはもはや予測がつかない。あえて言えば、人が動物を家畜化したケースが一番近いことを考えると、旧人類にとってあまり楽しい未来はやってこない可能性は高い。

投資への影響は…

この本はもちろん投資の本ではないので、直接的に投資に役立つことが書かれているわけではない。ただ、投資を考えるにあたって重要な示唆はいくつか読み取ることができる。その中でもとりわけ私が気にかかったのは以下の2つ。

  • 未来の予測は加速度的に難しくなっている
  • たかだか数百年の歴史は未来をまったく保証しない

未来の予測は加速度的に難しくなっている

10世紀の欧州で50年後を予測するのは簡単だったが、21世紀の現在では50年後はおろか、15年後ですら予測することは難しい。

今日ではすさまじいスピードで情報が蓄積、共有され、未来に対する予測もどんどんと更新されていく。未来に関する情報が得られると、その情報を前提にして人は行動を変えてしまうため、未来の可能性も凄まじい勢いで更新されていく

この状態で未来を予測するのは非常に難しい。おそらく、ほんの20年ほど前に比べてすら恐ろしく困難になっている。インターネット以前の歴史をもとに未来の予測可能性を判断するのは危険だ。

たかだか数百年の歴史は未来をまったく保証しない

現在の投資家、特に長期投資家は、産業革命のはるか後から現在まで、せいぜい150年程度の歴史をもとにリターンの目算を立てている。しかし、産業革命以前の世界では投資機会は非常に限られ、今のようなリターンを上げることは非常に難しかった。

仮に農業革命や産業革命に比する転換点が近づいているのであれば、過去150年程度の歴史を延長することで未来を予測することができるとは到底思えない。もちろん、リターンは跳ね上がるのかもしれない。しかし、遥かに長い寿命を持ち、不死に近づいた人類は要求リターンを引き下げ、リターンは地を這うかもしれない

そもそも、人類が生物的に2つに引き裂かれた世界で、資本主義と民主主義、法治が機能し続けるのかもわからない。思った以上に未来はリスクに富んでいるのかもしれない。

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